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2013.03.06 (Wed)

存在が疑わしきものについて ~「無題」の前振り~

物書きを自称する男は、とある酒場にて食事をとっていた。

マスターとの会話の中でなにか書けるようなネタがないとぼやく。

それを耳にした店内の別の客である交易商が作家に声をかけ、彼にとってはとびきりの話をしようとしている。

少し話を聞いていると、幽霊の話のようだ。

しかも、この街に現れると言う事らしい。

幸いにも、今は昼の繁忙期を過ぎ、客はカウンターにオルチャータをたしなんでいる少女が1人のみ。

交易商にラムをふるまいつつ、メモを片手に交易商のほうをじっと見つめている。


「へへ。先生。そんなかしこまらんでも、肩の力抜いてくださいよ。りきむのは話を聞いた後、実地調査するときでもかまわんでしょうに。」

そう言われて、作家はきょとんと見透かされたような顔をして、照れ臭そうに頭を掻いた。

「噂の現場に行く事まで見透かされていたとはね。」

「あたりまえでしょう。噂話だけでメシが食えるならみんなその辺の話をでっちあげて、出版してますよ。」

その交易商はけらけらと笑い声をあげた。


ごもっともな話だ、と作家は思った。さらに、そんな奇怪な噂話であれば、好奇心がもたげてきて、真相を確かめずにいられなくなるだろう。

ラムを一口飲み、姿勢を正して向かいでにこやかにしている交易商に、改めて話しをきかせてくれるよう促した。

19:55  |  短編書き下ろし  |  トラックバック(1)  |  コメント(0)

2013.02.11 (Mon)

セビリアの酒場から  ~ことの始まり・前篇~

ミッターマイヤーは昨日からの酒の余韻がのこっているようで、夕暮れになっても顔色が優れていなかった。

足取りも重たく面倒くさそうにセビリアの街中を歩いていた。


先日、バーボンハウスの同僚に出港の準備諸々を頼んだのち、彼は彼で出立の準備を進めていた。

場所はイスタンブール近海の東地中海まで。遠い道のりではないが久方ぶりの航海となる。

私用とはいえ、いやだからこそ、万全を尽くさねばならない。

彼は二日酔いの頭を抱えながらも、日中準備を淡々と進め、今できる必要最低限の準備をすすめた。

そろそろ日が暮れようかとしている時刻に差し掛かり、そよそよと吹く風が心地よい。

ほのかな潮の香りを感じながら、彼は出航の発端となった昨日の場所へ足を運び始めた。



12:40  |  短編書き下ろし  |  トラックバック(0)  |  コメント(2)

2013.01.09 (Wed)

【続編募集】セビリアの酒場から

 いつも陽気で、豪放な男がここ最近は黙りこくってカウンターに腰かけ、時折ため息をつきながら酒をあおっている。

どこからどう見てもおかしい。いつもと違う。

褐色の肌に明るい蜂蜜色の髪。頬には十字の傷がある。

酒を飲むときは仲間とテーブルを囲んであれやこれやと話し、げらげらと笑い呆けているのが常であるのに、どういうわけか今日は背中を丸めて、なにかに怯え、ひっそりと、まるで見つからないように隠れているかのような風情である。

ここセビリアは彼の本拠地である。当然のことながら顔見知りにもよく挨拶をされるのだが、顔を傾けて顔を見るなり手をあげて簡単に挨拶を交わすのみである。

赤胴色の髪を同じ色の髭を蓄えたバーボンハウスの商会長が訪れた時、気づいたか否か、十字傷の男は彼のほうを全く見なかった。

23:29  |  短編書き下ろし  |  トラックバック(1)  |  コメント(0)

2012.07.10 (Tue)

紅の傭兵(上)

ポルトベロ城塞戦から数年さかのぼった頃の話・・・


ミッターマイヤーはアムステルダムに来ていた。

かつて所属していた古巣を訪ねたわけではない。

盟友であるE・メックリンガーより、冒険中の護衛を依頼されたのである。

冒険家といえば聞こえはいいが、メックリンガーはまだ駆け出しである。

それにどちらかと言うと交易で身をたて、潤沢な資金を背景に遺跡発掘や美術品収集に従事している。

ミッターマイヤーとはルアンダへ宝石を買い付けに行っている頃からの仲である。


それにミッターマイヤーは、彼がまだ海に出たばかりのころに、何かと世話になった人物の故郷でもあるため、セビリアと同等の愛着をもっているようであった。

彼はメックリンガーの護衛の他に、都合があえば、その旧友にも挨拶をしておこうと思っていたのだった。


二人は港前で合流を果たすと、立ち話もそこそこに酒場へ向かい、マスターにコース料理をオーダーした。

そして、今回メックリンガーが受けた依頼の事や、今後の方針などについて話し合った。










22:21  |  短編書き下ろし  |  トラックバック(1)  |  コメント(0)

2012.06.30 (Sat)

旅の空から~通訳娘の航海日誌・後編~

私がポルトベロに向かっていたのにはわけがある。南米未開の地へと向かうコンキスタドールの一人で、フェルナンド・ラブレスという人物がいて、知人を介して通訳を頼まれたからだ。特に断る理由もなし、その申し出を引き受けて、ヴェラクルスで彼らと待ち合わせる算段を整えていたんだ。

バナナを食べながらふらふらと街を見聞して時間をつぶし、夕刻になったころで酒場にはいって腰を落ち着けていたんだ。そこへ知人がラブレスを連れてきた。ラブレスは紳士然とした男で、身なりもそれなりの格好をしていた。武装はしていたけれど、未開の地へと踏み込む冒険家ともなればそれも当然の事だと思っていた。

私たちはお互いの身の上を簡単に話をした。知らない者同士であるし、どれだけの時間共にいるかは分からないが、最低でも相手が何者か、それくらいの事は知っておかないといけない。

その当時は便宜上商会には所属していなかったけれど、バーボンハウスにいた事は伝えたんだ。
証拠も見せた。バーボンハウス商会員の航海日誌には刻印が刻んであるでしょう?ある種の身分証明書だからね。今もまだもってるよ。

さて、翌朝私たちはヴェラクルスから陸路でポルトベロに向かった。そのころのポルトベロは、確かにポルトガルの海賊が根城にしていたから物騒であったんだけど、ラブレスの人脈もそれなりにあって、さっき話に出ていたマルナードとも知己を得ていたから、私が随員としてそこにいても特別問題なかった。実際、ラブレスからマルナードを紹介されたくらいだったし。

「お前さんの知人はマルナードと知り合いか?」
みたいだね。ポルトガルの人だし、よく摸擬戦にも参加していたしね。

「もしかして・・・パイレーツコートきて、ラブリュス背負ってるショートカットの嬢ちゃんか。」

御名答。食いしん坊の彼女にはお礼に特製ピザを山ほどあげた。
今はどうしてるんだろうなあ。

「ああ、彼女とは俺がボヘミアにいるときに、政務でリューベックに立ち寄った時に偶然再会してな。ハンザ同盟に混じって、何やら商売を本気ではじめたらしくて、ナガサキで仕入れたそろばんと帳面をにらめっこしてうんうん唸ってるぜ。」


へえ、そうなんだ。時間があったら冷やかしに行こう。


ポルトベロには結構長くいたよ。コルテスが幅をきかしているところを何とか出し抜いてやりたいようで、あれやこれやと準備を整えていた時期だったんだ。マルナードもポルトガル人だし、イスパニア人には対抗意識を燃やしているようだったから、良く一緒に会議していたよ。

何も考えずにアステカに行こうと思ったらアルバラードがいて厄介だし、同国人でひと悶着起こすのは祖国から遠く離れているとはいえ、避けられるものなら避けていきたい。そんな思惑があったんじゃないかなあ。

15:51  |  短編書き下ろし  |  トラックバック(0)  |  コメント(0)
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