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2013.03.06 (Wed)

存在が疑わしきものについて ~「無題」の前振り~

物書きを自称する男は、とある酒場にて食事をとっていた。

マスターとの会話の中でなにか書けるようなネタがないとぼやく。

それを耳にした店内の別の客である交易商が作家に声をかけ、彼にとってはとびきりの話をしようとしている。

少し話を聞いていると、幽霊の話のようだ。

しかも、この街に現れると言う事らしい。

幸いにも、今は昼の繁忙期を過ぎ、客はカウンターにオルチャータをたしなんでいる少女が1人のみ。

交易商にラムをふるまいつつ、メモを片手に交易商のほうをじっと見つめている。


「へへ。先生。そんなかしこまらんでも、肩の力抜いてくださいよ。りきむのは話を聞いた後、実地調査するときでもかまわんでしょうに。」

そう言われて、作家はきょとんと見透かされたような顔をして、照れ臭そうに頭を掻いた。

「噂の現場に行く事まで見透かされていたとはね。」

「あたりまえでしょう。噂話だけでメシが食えるならみんなその辺の話をでっちあげて、出版してますよ。」

その交易商はけらけらと笑い声をあげた。


ごもっともな話だ、と作家は思った。さらに、そんな奇怪な噂話であれば、好奇心がもたげてきて、真相を確かめずにいられなくなるだろう。

ラムを一口飲み、姿勢を正して向かいでにこやかにしている交易商に、改めて話しをきかせてくれるよう促した。

【More・・・】

***




「・・・というぐあいでさ。先生」


「なるほど、確かにあなたのいうとおり、現地に赴くだけの好奇心を沸き立たされる話だ。噂話にしておくにはもったいないな。」



すっかり交易商の話に夢中になっていた作家の男であったが、一人で行くにはいささか危険を伴うことになるのは承知していた。

仮に、相手が本当に幽霊であればなおのこと、生身の人間で、しかも初対面の人物に安全の保障はないのである。

まして、自分には剣術や格闘術といった護身術の類はからきしであったからだ。

「ただ、こういった現地調査の類には危険がつきものだ。どなたか腕利きの航海者なり冒険者はご存知ではないかな。」

「さあ、今この港では私の知り合いは見かけませんし・・・。マスター、あてはありますかな?」

交易商もボディーガードの斡旋は行っていない様子で、マスターに尋ねるついでに、ラムのお替りを促した。

マスターはちらりと作家のほうをみやった。作家がうなずいたのを確認すると、交易商の手からグラスを受け取り、カウンターへ戻って行った。

ほどなくしてラムをなみなみ注いだグラスを商人の前に置き、うーんと思案を巡らしているようなそぶりを見せていたマスターが口を開いた。

「近々に、バーボンハウスの航海者がここに来るような事をうかがいましたよ。」

「ほう、バーボンハウス。あの老舗商会の航海者か。」

「先生、御存じなので?」

「御存じも何も、知らないほうがモグリだと言われるような商会じゃないか。」

「まあ、そうなんですがね。で、マスター。肝心なのはどなたがこの港に来られる予定があるのですかな?」

交易商も妙に興味がわいてきたような話しぶりであった。

「もしかしたらすでに到着しているかもしれません。私が受け取った文書は商会の秘書からでして、『近日中にバーボンハウスの元商会員がそちらを訪ねるだろう。元商会員とはいっても、いまだに交流の絶えない人物の一人なので、何か不測の事態が生じたら何でもいいから連絡をくれ』という事しか書いていないんです。」

マスターは自分で説明していても釈然としない様子で、首をかしげながら文書をテーブルの上に置いた。

「なんだそりゃ。要領を得ないですな。ここに酒を飲みに来る人全員に『貴方はバーボンハウスの商会員ですか?』なんて、聞いて回るなんて出来やしませんぜ。」

「確かに・・・・そんな事聞いて回ってもという気がしますしね。。。」


マスターだけでなく、そこにいる三人ともがしかめつらになった。

バーボンハウスの商会員とはいったい誰なのか。なぜかそちらのほうが気になってしまい、本来の噂話の事や、用心棒の事はすっかり頭から抜けつつあった。

「マスター。オルチャータおかわりください!」

そんな折に、カウンターの席から甲高い声がした。

マスターははっとして、カウンターのほうへ歩を進めた。

「ああ、お嬢ちゃんすまんね。すぐ持ってくるから。」


「あれ、その書簡、バーボンハウスのものじゃない?」

ぎくりとしてかたまっているマスターをよそに、少女はまじまじと覗き込んだ。

「やっぱりそうだ。ラーベナルトもおかしな書簡をよこすんだなー。なんでだろ?」

「お、お嬢ちゃん、バーボンハウスのなにかかい?」

驚きを隠せないまま、交易商はおそるおそる聞いてみた。

金髪のツインテールによく日焼けした肌。瑠璃玉のように大きな瞳に愛嬌を感じさせるが、不釣り合いな縦一文字の傷跡がある事で、どこか不釣り合いな雰囲気が出ている。

「んー。そうだけどね。今はほとんど航海には出ていなくて、放浪の旅をしているところ。」

「そうなのか・・・。で、今日はどうしてここに?」

「あ、待ち合わせをしていてね!私パティシエだから、長旅に必要な保存食を作って商売してるんだ。まあ、今日のお客さんからはぼった食ったりはしないけどね。同僚だし。」


ところどころ言語が入れ替わり、話を聞くほうにとっては混乱しかねないような口ぶりであったため、三人は大体のところを理解した程度で苦笑いしながら聞いていたが


「・・・同僚?」

首をかしげたのは作家だった。そのまま疑問に思いつつも尋ねてみた。

「お嬢ちゃん、バーボンハウスの商会員がここに来るのかい?」

「うん、来るけど・・・どうしたの?なにかあったの?」

「それなら話が早い。実はかくかくしかじかのことでね・・・。」


話を聞き終えるやいなや、少女の瑠璃玉は好奇心の塊になって、キラキラと輝き始めた。

「私もいく!!そこに私も行くから!」

「いや、お嬢ちゃん、危ないかもしれないから用心棒を頼もうとしてるんだよ・・・。」

「大丈夫だ。問題ない。」


酒場にいる4人とは全く違う声が入り込んだ。
声が聞こえたほうを見やると、いつ扉を開けたのか、入口近くのカウンターに人影が二人。
1人は均整のとれた収まりの悪い金髪に小麦色の肌。
もう1人はがっちりとした体格でひげを蓄え、鎧を着ている偉丈夫であった。

「遅いじゃないか、ミッターマイヤー!!」

瑠璃色が飛び跳ねて出迎えた。

「・・・いちいちそれを言わなくてもいいじゃないか。遅れてなくてもそうやって言うのは変わらないな。」

やれやれと言った風で頭を掻きながら少女にごちりながら、ぽかんとして成り行きを見ている、本題について議論をしていたはずの三人に向かって話を始めた。

「今来たばかりでいきなり彼女が危険だとかいうはなしになったからつい声を出してしまったんだが・・・、護衛というか用心棒というかそんなご依頼かな?ちょっと二度手間のようで悪いんだが、話を聞かせてもらえないだろうか。この娘がそこまで興味津々なのがとても気になるのでね。」

おもむろにとなりのテーブルから椅子二つ引っ張り出してきて、作家の向かいに腰をかけた。

交易商はそれまで作家の向かいであったのだが、自然と席をかえ、作家の横に滑り込むようにして座った。

「申し遅れたが、私はミッターマイヤー。バーボンハウスの元商会員だ。となりにいるのはロドリー・・・。いや、カバーリョ元イスパニア海軍中佐だ。そこのおてんば娘はNeyaという。よろしく頼む。」

ひととおり名乗りでて、ミッターマイヤーは頭を下げた。

マスターは人数が増えた分のウィスキーを持ってきて、新しい客の前にグラスを置いた。

「では、お話を聞かせて頂きましょうか。」

カバーリョが乾杯の音頭をとり、グラスを鳴らし、一口酒をあおった。

「・・・コホン。ではお話ししましょう。実はこういう噂話がまことしやかにあるんでさ・・・。」



気を利かせての事か、酒場の表には「只今閉店」の看板がぶら下がっていた。


   

                          ~つづきはアナーキー・ゴードンのブログにて~

                                       
                              ※あとはまかせた!!

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19:55  |  短編書き下ろし  |  トラックバック(1)  |  コメント(0)

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太陽の出ている今時分でも、意外と忙しいものだ。
2013/03/06(水) 22:32:27 | きっと明日はいい天気。

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