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2013.02.11 (Mon)

セビリアの酒場から  ~ことの始まり・前篇~

ミッターマイヤーは昨日からの酒の余韻がのこっているようで、夕暮れになっても顔色が優れていなかった。

足取りも重たく面倒くさそうにセビリアの街中を歩いていた。


先日、バーボンハウスの同僚に出港の準備諸々を頼んだのち、彼は彼で出立の準備を進めていた。

場所はイスタンブール近海の東地中海まで。遠い道のりではないが久方ぶりの航海となる。

私用とはいえ、いやだからこそ、万全を尽くさねばならない。

彼は二日酔いの頭を抱えながらも、日中準備を淡々と進め、今できる必要最低限の準備をすすめた。

そろそろ日が暮れようかとしている時刻に差し掛かり、そよそよと吹く風が心地よい。

ほのかな潮の香りを感じながら、彼は出航の発端となった昨日の場所へ足を運び始めた。



【More・・・】




***




酒場のドアを開けるとまだ客はいなかった。

看板娘のロサリオとマスターが客を出迎える準備を完了させ、最初のお客さんはどなたかな、という風でドアが空いた方向を見た。

その最初の客というのが、昨夜どす黒い何とも言えない空気を漂わせて、1人グラスを傾けていた男であったのだから、いくら話がついたとはいえ今日もまた何かあったのかと、歓迎していいものかどうか何とも言えない表情を二人は見せた。


「・・・今日は大丈夫だ。昨日の酒がまだ残ってはいるがな。」


その空気を読んでか、ミッターマイヤーは二人に声をかけた。

するとカウンターの二人はほっと安堵の息をついて、客をカウンターへ案内した。


「よかった。今日はいつものミッターマイヤーさんね。」

「・・・ああ、昨日は迷惑をかけた。すまない。」

「いいわよあれくらい。どんな人でも憂鬱な気分になる事くらいあるわ。でも、あの調子で何日もいられたら困るけどもね。で、今日は何にします?」

「とりあえず、ライムジュースをくれ。」

二日酔いの身にいきなり酒はまずかろうと思い、マスターにオーダーを出した。

「ところで、詳しいところは聞いていなかったんだけど、組合長と何を話していたの?」

「秘密だ。」

「まあ、いじわる。」

「いじわるをしているんじゃない。話すまでもない事なんだ。」

「話すまでもない事のために、あんなにどんよりしていたのかしら?」

「そうだ、そのとおり。今だからそう言えるんだが、その時は本当に悩んでいたんだ。真剣に。」

「・・・。ライムジュース、おまちどうさま。」

ロサリオがマスターから受け取ったライムジュースを、カウンター越しに手渡した。

ミッターマイヤーがそのままの流れで一口飲んだ。

それを眺めていたロサリオがはっとした風に口を開いた。

「あ、そういえば、ロンドンから通信が入っていたわ。」

「ほう。」

「数日前に白虎の旗を掲げた紅い戦艦がセビリアに向かって出港する手続きをとったって。」

「・・・。」

「高速戦艦みたいよ。」

「そうか。」

「・・・ねえ、なにをしようとしてるのよ。」

「悪い事をしようとはしていない。」

「そうじゃなくて。いまさら戦艦引っ張り出して何をしようとしているの?」

「俺の問題だ。別にいいじゃないか。このまま君が知らないからと言って、どうなるわけでもない。口に出したくもない事も、たまにはあるんだ。」

ロサリオとは目を合わせずに彼女の要求をもっともらしい言葉で拒絶し、手に持っているライムジュースをもうひと飲みした。

「そもそも、ロンドンから来る紅い高速戦艦が、なぜ俺の船だと決まっているんだ?」

「あら、そ。わかったわ。」

肩をすくめつつも、ロサリオは言った。

「ん、なんだ、今日はずいぶんと聞きわけがいいんだな。」

情報屋も兼ねる酒場娘のロサリオである。いつもならもっと執拗に聞いてくるはずなのだが、今回は妙にききわけのいい様子であった。

そういう時はたいてい・・・。

思いを巡らしているちょっとした間に、ロサリオがいつの間にかカウンター席のとなりに移動していた。

あっと声を出した次の瞬間、ロサリオが耳元でミッターマイヤーに告げた。



言い終えたのか、耳元から顔を離して、ロサリオが笑みを浮かべながらミッターマイヤーの様子をうかがっている。

彼は髪の毛をくしゃくしゃと手でかき回しながらうつむいて、ため息をついた。その顔が酒も飲んでいないのにわずかに頬があからんでいる。

「まったく・・・お前ってやつはどうしてこうも悪知恵が働くんだ・・・。」

「うふふ、おあいにくさま。船乗りはたいていここにくるんだもの。フェレロ公爵の御曹司さんはセビリアにもよく寄ってくれるみたいで、顔なじみよ。その彼から聞いたの。交渉の材料にはなるかしら?」

「ジョアンめ。恩を仇で返しやがって・・・。まあいい。それはそれで事実だから仕方がないな。」


「やった!!じゃあ、お話聞かせてくれる?」

「・・・まあ、そこまで聞いているならもうどうしようもないしな。ただし、他言無用で頼むぞ。これは赤毛の組合長にも言っていないんだ。」

「もちろん、それは約束する。酒場の看板娘の名にかけてね。」

「よし、じゃあ話をしてやろう。」

ミッタマイヤーは残りのライムジュースを飲み干すと、いつもとは少し違うウィスキーを注文した。







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12:40  |  短編書き下ろし  |  トラックバック(0)  |  コメント(2)

Comment

引退しているロンドです^^

お元気そうでなによりです^^

また ブログ覗かせてもらいますね!
では
ロンド |  2013.03.02(土) 21:18 | URL |  【編集】

おや、お久しぶりです^^
貴方こそ、お元気そうでなによりです。

みったま |  2013.03.05(火) 18:40 | URL |  【編集】

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