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2009.08.27 (Thu)

千億の星 ひとつの希望【完結編】








一隻の船が波間を漂っている。


人影はなく、ただゆらゆらと潮の流れにまかせるがままのようである。

しかし帆はきちんとはられており、船体には損傷はみられるものの致命的なものではない。

一体この船に、何が起こったのか。

海の上で起こる事を想像するのは人為的なものであればたやすい。

一見したところ、おおかた海賊にでも襲われたのであろうと思われる。

嵐ならば帆もボロボロになっているはずである。

船体への損傷と、水夫が少ないところをみると、どうも海賊船におそわれた、というところで説明がつくようなこの状況だが、問題はそのようなところにはない。


船長は、健在である。

しかし、メインマストの柱に寄り掛かって、すわりこんだまま動く気配はない。

左腕のつなぎ目あたり鎖骨のやや下あたりから血をながしている。

心臓に近い個所である。応急処置はしてあるものの、包帯を巻いてしばらくすると出血で朱に染まる。

陸に上がって早く治療を受けねばならないが、船は損傷がひどく、本来の速度での航行速度をだせずにいる。


ただそれでも、船長は副官やわずかな水夫たちに指示を出し、母国へ戻るべく指揮を執った。

ときどき、出血による貧血で意識を失いながらも、船長としての責務をはたしていた。














それから10日ほど経過した。
























「船長!!セビリアが見えてきやした!!」



見張り台の水夫が叫んだ。









副官が安堵のため息をつき、ふと傍らに座りこんでいる主人のほうをちらりと見た。



「てっ提督!!!」



叫ぶなりあわててしゃがみ込んで、船長の顔を覗き込んだ。




顔面蒼白となりながらもなお健在であった船長は、表情一つ変えずにその報告を聞いていたのかいないのか。そのあたりはわからなかったが、こうべを垂れて気を失っていた。










「医者を呼べ!!!はやく!!!」












副官の指示を出す声と、甲板を駆け巡る足音で意識を取り戻した船長は様子を窺いに顔を近づけた副官を一瞥し、冷笑を浮かべながら言った。









「騒ぐな。負傷したのは、俺だ。卿ではない。副官の任務に、俺に代わって悲鳴を上げるというものはなかったはずだ。」








冷然と言い放つ船長であったが、誰の目にも疲労の色は明らかであった。



負傷してから日はたっているとはいえ、ろくな処置も受けられずに血を流していたのである。また海の上である以上、物資についてはなかなか思うようなものは手に入らない。







「俺にはベッドの上で、パジャマを着て、死ぬのは似合わない。そうは思わんか?」



問われた誰もが回答しにくいような事をいいつつも、自らの責務を果たさんとメインマストの柱に寄り掛かっていた。






海賊におそわれ、自らは負傷しながらも、ここまで混乱もなく帰還できたのは、船長の尋常ならざる精神力と統率力の賜物であった事は疑いようもない。









日が、暮れようとしていた。












「まもなく、セビリアに着きます。寄港の準備に取り掛からせていただきます。」





夕焼けに染まる水平線を見つめながら副官は報告をした。






「・・・・・・・・提督、今ここにいる水夫たちは、最後まで、提督のお供をする、と言っております。」










「そうか。・・・・・・世の中、案外バカが多いな・・・・・。」







そう言われて、戸惑いを隠せない副官を横目に、再び静かに目を閉じた。





一瞬、こときれたのかと思い狼狽して駆け寄ったが、呼吸をしているのを確認すると、胸をなでおろし、寄港の準備に取り掛かった。




彼らの長い一日は、まだ、始ったばかりであった。









【続きは↓から】

【More・・・】









































セビリアに着くと、病院にもいかずに、自宅へと向かい、そこへ着くなりどかりとソファにすわりこんだ。


満身創痍と言っていい、この剛毅な船長は、無事にたどり着けたことで安堵したのか、そのままうなだれて気を失ってしまった。












次に気がついたときには、日はとっぷりと暮れて、部屋のあちこちに明かりが灯されていた。









彼の傍らには相も変わらず長髪に口ひげを蓄えた、芸術家のような風貌の副官が控え、彼が呼んだのであろう医者と思わしき男が包帯を取り替えていた。


「提督。ミッターマイヤー提督が、こちらに向かっておられると、バーボンハウスの方が知らせてくれました。」


副官は船長の親友の来訪が近い事を告げた。「疾風」の二つ名をもつその男は、今懸命にセビリアに向けて船を走らせているに違いない。







「・・・ぁあ。」




短く答えると、船長はまた目を閉じた。

彼は冷静だった。まるで自らを診察するかのように手を動かしたり、足をあげてみたりと、しばらくの間体をうごかした。いや、動かそうと試みていた。

彼の体は彼のものであるに違いないのだが、もはや彼の意思に従おうとする部位はおおくなかった。



「負債を、返す時が来たか・・・。」





思えば、長いようで、短い人生であった。陳腐で平凡極まりない表現だが、危険と波乱に満ち満ちた大海を往き、栄華盛衰を思う存分に味わった。時には海賊と戦い、友と武勇を競い合った。
悔いはない。少なくとも、己が歩んだ道は・・・。




「古代の、偉そうな奴が、偉そうに言った言葉がある。死ぬに当たって、幼い子供を託しうるような友人をもつことが叶えば、人生最上の幸福だ――と」







つぶやくやいなや、傍らにいる副官、E・メックリンガーに目を向けて





「ウォルフガング・ミッターマイヤーに、我が息子の将来を頼め。それが我が息子にとって、最良の人生を保証することになる。」




E・メックリンガーはかぶりをふって彼の命令・・・いや、願いを拒否しようと口をあけかけたが、

意識を失った自分の上官の姿をみて、先ほど退室した医者を呼び止めに部屋の外へ出ていった・・・・。





















次に目を覚ました時、医者は退室していた。メックリンガーもおらず、執事が息をのんで立っているだけであった・・・・。



「ミッター・・・マイヤーは・・・・どうした?」


固まっている執事に問いかけた。


「はあ・・・。まだ、おつきには・・・・なっておりません。旦那さま・・・・。そ・・・・それよりも、今はお休みください・・・。」



声を絞り出すようにして、主人の問いかけに答え、沈痛な面もちで主人を気遣った。





「あぁ・・・・。そこにウィスキーが入っている。グラスを二つ・・・・とってくれないか。」






「・・・・・・かしこまりました・・・・。」








そこまで言うと、この部屋の主人はぐったりと椅子にもたれかかり、天井を仰いだ。







どうも、性にあわんなぁ・・・・。今まで散々悪どい事をしてきたこの俺が、最後は善人になって死にまし

た・・・・などと、後世に言われるような死に方でもするつもりか?

・・・まぁいい。人それぞれの死、それぞれの生だ・・・・。


だが・・・・・




だが、せめて俺の敬愛した極少数の人々には、より美しい死が訪れんことを・・・・









男は、部屋の入口を見つめたが、人が入ってくるような気配はみじんも感じられない。

相変わらずひっそりと静まり返っていて、執事が準備のために動きまわっているときの音しかきこえない。






男はふぅと息をついた。

















「遅いじゃないか、ミッターマイヤー……卿が来るまで生きているつもりだったのに間に合わないじゃないか……。疾風ウォルフなどという大層な渾名に恥ずかしいだろう・・・・」











いくつかの




わずかな時がたち



男の時は



永遠に止まった・・・・。




























「・・・・そうか。あいつは最後まで俺を待っていたのか・・・。」


セビリアの酒場で頬に十字傷のある男が、声を絞り出すように言った。



「・・・はい。最期まで、ミッターマイヤー提督を待っていた、と執事は申しておりました・・・・。」




長髪に口ひげを蓄えた、芸術家のような風貌の男が彼の問いに答えた。


彼の表情も、晴れやかさとは無縁のものであった。

上官が死んでから眠れぬ夜を過ごしていたのだろう。頬がこけ、顔からは血の気が引いている。







「で、ミッターマイヤー提督、船長から船長の息子を預かっておりまして、この子を頼む、と。」




年端もいかぬ幼子であった。



黒髪にアイスブルーの瞳。まさしく、父親譲りのものであった。



ミッターマイヤーは、はっとして、しばらく親友の忘れ形見に見入っていたが、やがてわれにかえると

頭を掻きつつぼやいた。





「まいったな。あいつにそっくりじゃないか。性格までになきゃいいけどなぁ・・・・。」

「で、メックリンガー。この子の名前は?」




メックリンガーは一度口に含んだワインを噴き出しそうになった。



「いや、それが・・・・船長はなにもおっしゃっておりませんで・・・・。」







名前は、あるはずなのだが聞いていなかったのである。








あいつも、とんでもない親だな。












ミッターマイヤーは苦笑しつつ、メックリンガーに言った。

「ウチの嫁がかねがね考えていた名前があるんだ。とても良い名前でね、それをこの子につけようと思う。」













ミッターマイヤーは幼子を抱き抱え、彼を見つめた。




「フェリックス。古い言葉で『幸福』を意味する言葉だ。おまえは今日から、フェリックス・ミッターマイヤーだ。親父に似ず、いい男になれよ。」






























最期まで読んでいただきありがとうございました。

以前に描いた前編と後編をくっつけたんですが、後編は最後めんどくさくなってgdgdになっちゃいました。
私の悪い癖です。


というか、こんなことやってちゃ、アンソロ間に合わんけど大丈夫か自分。。。。。




いろいろと突っ込んでくれるとうれしいです^^


今回も、ダレとは言いませんけどオサーンのために文字を大きく致しました





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01:16  |  短編書き下ろし  |  トラックバック(0)  |  コメント(2)

Comment

No title

み、見やすい。って聞いてないかw
なかなかの大作ですね^^
楽しませて戴きました。
私なら前半で主人公爆死にしちゃいますけどねw
リック・ディアス |  2009.08.27(木) 00:57 | URL |  【編集】

Re: No title

リックさん

いつもありがとうございます^^

銀英伝のあるキャラの最期をモチーフというかほぼそのままパクリました。

なので、苦しいながら生きながらえさせたわけですw

暇な時また書きます。ありがとうございました
ミッターマイヤー |  2009.09.01(火) 14:31 | URL |  【編集】

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