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2012.06.30 (Sat)

旅の空から~通訳娘の航海日誌・後編~

私がポルトベロに向かっていたのにはわけがある。南米未開の地へと向かうコンキスタドールの一人で、フェルナンド・ラブレスという人物がいて、知人を介して通訳を頼まれたからだ。特に断る理由もなし、その申し出を引き受けて、ヴェラクルスで彼らと待ち合わせる算段を整えていたんだ。

バナナを食べながらふらふらと街を見聞して時間をつぶし、夕刻になったころで酒場にはいって腰を落ち着けていたんだ。そこへ知人がラブレスを連れてきた。ラブレスは紳士然とした男で、身なりもそれなりの格好をしていた。武装はしていたけれど、未開の地へと踏み込む冒険家ともなればそれも当然の事だと思っていた。

私たちはお互いの身の上を簡単に話をした。知らない者同士であるし、どれだけの時間共にいるかは分からないが、最低でも相手が何者か、それくらいの事は知っておかないといけない。

その当時は便宜上商会には所属していなかったけれど、バーボンハウスにいた事は伝えたんだ。
証拠も見せた。バーボンハウス商会員の航海日誌には刻印が刻んであるでしょう?ある種の身分証明書だからね。今もまだもってるよ。

さて、翌朝私たちはヴェラクルスから陸路でポルトベロに向かった。そのころのポルトベロは、確かにポルトガルの海賊が根城にしていたから物騒であったんだけど、ラブレスの人脈もそれなりにあって、さっき話に出ていたマルナードとも知己を得ていたから、私が随員としてそこにいても特別問題なかった。実際、ラブレスからマルナードを紹介されたくらいだったし。

「お前さんの知人はマルナードと知り合いか?」
みたいだね。ポルトガルの人だし、よく摸擬戦にも参加していたしね。

「もしかして・・・パイレーツコートきて、ラブリュス背負ってるショートカットの嬢ちゃんか。」

御名答。食いしん坊の彼女にはお礼に特製ピザを山ほどあげた。
今はどうしてるんだろうなあ。

「ああ、彼女とは俺がボヘミアにいるときに、政務でリューベックに立ち寄った時に偶然再会してな。ハンザ同盟に混じって、何やら商売を本気ではじめたらしくて、ナガサキで仕入れたそろばんと帳面をにらめっこしてうんうん唸ってるぜ。」


へえ、そうなんだ。時間があったら冷やかしに行こう。


ポルトベロには結構長くいたよ。コルテスが幅をきかしているところを何とか出し抜いてやりたいようで、あれやこれやと準備を整えていた時期だったんだ。マルナードもポルトガル人だし、イスパニア人には対抗意識を燃やしているようだったから、良く一緒に会議していたよ。

何も考えずにアステカに行こうと思ったらアルバラードがいて厄介だし、同国人でひと悶着起こすのは祖国から遠く離れているとはいえ、避けられるものなら避けていきたい。そんな思惑があったんじゃないかなあ。

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2012.06.26 (Tue)

旅の空から。~通訳娘の航海日誌~

相変わらず鼻につくような異臭がほのかに漂っているセビリア三番商館内ではあるが、異臭の持ち主は既にいない。
盟友の一人、頬に十字傷のある男の自宅で旅の垢を落としに行ったのであった。

もう古参と言ってもいいだろう。一人は金髪に日に焼けた褐色の肌、頬に十字の傷をこさえた軍人風の男。もう一人は赤銅色の挑発に、同じ色のひげを蓄えた偉丈夫。とくに示し合わせたわけでもないのだが、ばったり商館内で会ったところから今に至る。

今日はいつになく昼間から商会員がつめており、古参の二人に加え、新たに加入した新米の航海者もくわわったこともあり、ささやかな歓迎会じみた雰囲気を漂わせていた。商会秘書のラーベナルトも、書類の山をもくもくと処理しながら、4人の話に耳を傾けていた。


そんなところへもう一人、予期せぬ来客があった。外套にすっぽりと身を包み、不衛生な異臭を漂わせながらツインテールの少女が商館へ姿を現したのであった。





しばらくして・・・大分さっぱりした様子で少女は席についた。いままでは形容しがたい異臭に身を包んでいたのであるが、今はまるで別人のような雰囲気を漂わせている。顔は健康的な小麦色。その顔には二つの瑠璃玉。瑠璃玉の一方には不釣合いな一文字の傷痕が走る。

少女はラーベナルトが持ってきてくれたグラスに自前の琥珀色を注ぎ、一息に半分を飲んだ。

ふうと一息ついたところで、ほかの四人の顔を見渡した。

新人の二人はいまだ信じられない様子でポカンとしている。古参の二人はグラスを空けて、少女が口を開くのを今かと待ち受けるかのように口元が緩んでいる。


「実はね、ポルトベロ城塞にいたんだ。」

グラスの中にあるロックアイスを指でくるくる回しながら少女は切り出した。

「なに?」

古参二人の顔つきが一変した。

「マルナードの連中につかまっていたのか。」

神妙な顔で赤髪が尋ねた。

「んー。そういうのではないのだけれど、最終的には捕虜と同じところに放り込まれちゃって。」

「要領を得んな。道中の成り行きに興味がある。話してくれ。」

先ほどまで声をあげて場をにぎやかにしていた軍人風の男も、身を乗り出さんばかりに耳を傾け始めた。

「お前さんが旅に出た後だから知らんだろうが、実はな、俺は先のポルトベロ海戦に参加していたんだ。キャプテンの財産を持ち逃げした野郎がマルナードと組んでいるという情報を仕入れてな。キャプテンと一緒に商会を抜けてバルタザールの艦隊と合流し、旧バーボンハウス商会員で組織された独立艦隊の指揮を執った。最後は海戦でとっ捕まえた海賊から地下道のありかを聞き出して、中に侵入したのが俺達ってわけだ。そんな経緯もあるから余計にお前さんの話を聞きたいのさ。なぜ、お前さんがそこにいたのかをな。」

「・・・なるほどね。今回のような目にあったのにはバーボンハウスが関係していたからか。まあ、順を追って話すね。」


少女はグラスの中のもう半分を一息にのみ、上を向いて目を閉じた。


商会内に少しの沈黙が訪れたのち、彼女は話し始めた。




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