2012年05月 / 07月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫06月

--.--.-- (--)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--:--  |  スポンサー広告

2012.05.16 (Wed)

帰れる場所があるから

セビリア三番商館には夜遅い時間にもかかわらず、いまだ、煌々と明かりがともされている。

戦争だ何だと何かと騒がしかった昼間とは一変して、外は暗闇と静寂に包まれて、物音ひとつしない。

商館でも、少し物音をたてようものなら、響き渡ってしまうくらい、今夜に至っては静かである。

いや、本来ならそういうものなのであろうが、この三番商館の明かりがついているうちは、昼も夜も関係がないくらいの喧騒に包まれているのが常であった。

酒を飲むもの、本を片手に談笑するもの、腕試しをするもの、議論するもの・・・。

今夜は商会秘書が記録をする日誌や、なにやらの書類にサインをする際の、ペンを走らせる音が聞こえるばかりである。


「ラーベナルト。世話になったな。これでとりあえずはお別れだ。」

「会長・・・寂しくなりますね。」


「君がこの書類を受領すれば『元』商会長だ。」


サインを済ませた二通の書類を差し出して、頬に傷のある男は笑みを浮かべた。



「いろいろと・・・まあなんだ。その、元気でな。」


この期におよんでうまく言葉がでてこない自分を情けなく感じつつ、絞り出した別れの言葉は実に平凡で、ありきたりなものであった。

秘書と男は握手を交わすと、手元にあったウィスキーの入ったグラスを一息に飲み干し、商館を出て行った。










スポンサーサイト
22:35  |  短編書き下ろし  |  トラックバック(0)  |  コメント(4)
 | HOME | 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。