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2010.03.03 (Wed)

財宝よりも輝いて ~ショートショートお題~

バーボンハウスといえば、セビリアでも屈指の老舗商会であるということは、イスパニアのみならず、欧州諸国でも知られている。しかしながら、商会員が世界でも指折りの航海者が揃う商会である事は、意外と知られていない。それは彼らが表立って何かをやろうとしていたわけでもなく、商会全体で国粋活動を行うような商会でもない。また、自分の財力、知識力を鼻にかけてふれまわるというような事をしないためである。
『酒場で噂になる』ことは多々あれど、それがもとでどうということもない。ただ、もともと熟練の船乗りたちが集まっているので、大きな海戦や、討伐隊の派遣依頼があったときに、まさに鬼神の如き活躍をし、その後は何事もなかったように普段の日常に戻る、それがバーボンハウスなのだ。
そんな話を聞いてか聞かずか、今日もまた、セビリア三番商館に入会希望の航海者が訪れてくる。
中には老舗商会である事すら知らない者も、商館の門を叩く。
そんなかんじで、今のバーボンハウスができていく。
時が移ろえば、人も変わる。去る者、残る者、それぞれである。

初代から数えて9代目にあたる商会長のミッターマイヤーは、今日訪れてきた入会希望者の面接を終えたところであった。一息つこうとカウンターにいる商会秘書に手を挙げると、秘書はうなずき、棚にあるウィスキーを取り出すと、グラスに氷をいれて、ウィスキーを注いだ。

ミッターマイヤーはテーブルに置かれたグラスを手に取り、くるくると転がしながら何やら考え事をしていたそぶりであったが、傍らに控えている商会秘書に声をかけた。

「そういえば、ラーベナルトは俺がバーボンハウスに来る前から、ここにいたんだよな。確か俺が初めてここに来た時も、こうやってウィスキーを出してくれたっけ。」

そう聞かれると、秘書はにこりとわらって、うなずいた。ラーベナルトとは商会秘書の名前らしい。

「あれから2年が経ちます。はやいものですね。貴方の通り名のようです。」

「誰がうまいことを。まあ確かに早いもんだよね。今と昔とはメンバーも変わっているし、俺が商会長なんて夢にも思わなかったし。」

ミッターマイヤーはおもむろに遠くを見つめるような目つきになった。

「あの頃はまだ航海者学校の制服を着てましたねえ。今はもうお忘れでしょうけど、豚を船いっぱいに積んで帰ってきては、豚肉に加工して転売しておりましたね。それで1千万の財を築きましたよね。」

「ああ、そうだ。やはり軍人になるには先立つものが必要だと聞いてねえ。ネーデルランドの連中に、だいぶ助けてもらったよ。懐かしいもんだ。」

そこまで言うと、ミッターマイヤーははっとして、ラーベナルトのほうを振りかえった。

「あ、そうだ。ラーベナルト。俺よりもずっと昔から、ここにいたお前さんだ。今いる古参の商会員や、昔所属していた連中のこともよく知っているだろう。昔話ついでに色々と聞かせてくれないか。そう、俺達が航海から戻ってきた時に披露する、冒険譚のようにだ。この商会も老舗と呼ばれるくらいの歴史がある。人様の『出会いや別れ』は、それこそたくさんあったろう。さっきまで入会希望者と話をしていたら、ふとそんなことが頭をよぎったものでね。『過去にいた商会員』の話なんて、ラーベナルトはよく知っているんじゃないかな。」

ミッターマイヤーは目を輝かせて、ラーベナルトに催促した。

やれやれといった感じで、ラーベナルトはカウンターに戻り、来客用のグラスにウィスキーを注ぐと、ミッターマイヤーが座っているすぐ隣に腰かけた。


「さぁ、バーボンハウスの生き字引さんよ。今夜はどんな話をしてくれるんだい。」

二人はちょうど目の高さまでグラスをあげて乾杯し、ぐいと一口流し込んだところで

「そうですねえ・・・・こんな話はいかがですか。」


ラーベナルトは語り始めた。



                            ~完~



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18:47  |  短編書き下ろし  |  トラックバック(0)  |  コメント(4)
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